God only knows.
(どうして、あいつはわかってくれないんだろう。あそこにいるのはあいつの為になんかならない。あそこで得られるのは、血塗られた手と殺戮の兵器だけだ。そんなのあいつには似合うはずもないのに。)(あいつに似合うのが俺の側だなんてそんな傲慢なことは言わない。これは単なる俺のエゴでしかないのだから。)
軍の腐食は止められない。それは今回の事件であの心優しい幼馴染にも十分伝わったはずだ。無実の罪で殺されそうになったのは他でもない彼なのだから。それなのに彼は軍を内側から変えると言って自分の誘いを拒んだ。悲しそうな笑顔とともに「ありがとう」と一言残して。ルルーシュは自分の手を見つめながらあの時のスザク瞳を思い返していた。
(俺は「壊す」ことを望んだ。)(あいつは「変える」ことを望んだ。)
決して交わらない平行線のように、彼と自分の願いは相反している。似ているようで全く違う。自分がどれだけ彼を渇望しようと手に入ることはないのだと思い知った。
「馬鹿が…」
彼は自分の手を取らなかった。差し伸べたのは自分だが、掴むかどうかは彼の意思に任せていた。しかし自分には彼が必要だということも自覚していた。無理矢理にでも引き寄せればよかったのだ。細い腕は少し力を入れれば折れてしまいそうなほどだったが(ちゃんと食べているのだろうか)、彼を受け止められないほど自分は弱弱しいわけではない。あの時正体を明かしていたらどうなっていただろう。彼はこちらに来ただろうか。答えは否だろう。自分が何者であろうと彼は彼自身の意志を貫き通すはずだ。だからこそ自分は彼にどうしようもないほど惹かれている。
このまま帝国軍との戦いを続けていたら、いずれまた彼とは戦場で会うことになるかもしれない。否、きっと、なる。それは確信にも似た予感。しかしルルーシュは自分の勘というものを信じている。きっとスザクに再会すると
。ルルーシュは立ち上がると、息をゆっくり吐き出し前を見据えた。
(その時、引き金を引くのは俺かお前か―――。)
それは神のみぞ知る。
(06/11/01)