猛烈な睡魔を感じながらも、重い瞼を無理矢理押し上げてみると、そこには不機嫌そうなラビの顔があった。いつもの鬱陶しいほどにこにこした顔はどこにもなくて、不機嫌とまではいかなくとも、明らかに拗ねているのが見て取れた。ラビに怒りを向けられるようなことをした覚えはないはずだ。なのに目の前の顔を明らかに不満を表している。
「おい、顔近ぇよ」
と諭してみても、眼前の顔を後退させるほどの効果は得られなかった。その距離わずか5cmほど。鼻先と鼻先が触れ合いそうなほど近い。ベッドに寝そべっている自分が顔を上げるとラビの顔にぶつかってしまう。起き上がるためにも一刻も早くそこから退いてほしいのだが、ラビがそこから動く気配は一向にない。
ラビが怒っている(ような気がする)原因はきっと自分にある。そこまでは理解した。しかしどんなに記憶を遡ってみても神田がラビの気に障るようなことをしたという事実は見つからなかった。
(俺が何したってンだよ…)
理不尽というものだろうこれは。自分に何か原因があるとしても、それがわからない今、自分が責められる謂れはないのだ、と神田は自己完結することにした。何もわからないままあからさまな機嫌の悪さを振りかけられても困る。
「言いたいことがあるんだはっきり言えよ」
「ユウ、ホントにわかんないの?」
いや疑問形で返されても、と神田が講義しようとするのを待たず、ラビは覗き込んでいた顔を離すとそのまま立ち上がり、部屋を出て行った。神田にはまったくもって謎の行動としか思えない。しかし神田の言葉にラビは一瞬寂しさや悲しさといった表情を見せた。怒りよりも落胆に近かったと言っていい。
ふと部屋の中を見回してみると、殺風景な壁にかけられたカレンダーが目に入った。日付を確認する程度しか使われていないそれは、カレンダーとしてはあまりにも白すぎるが。その白の中に簡単に見つかる赤い印。その瞬間に理解した。今日が何の日だったのかと。
以前ラビが部屋に来た時にふざけてつけていった赤い印。それはラビが自分の生まれた日を主張するためにつけたものではなかったか。
(いやそれでも俺がキレられる道理はないだろう。俺はあいつの保護者でもなけりゃ恋人でもない)(あいつがどう思おうと俺は知らない、知らない)
強烈な睡魔はいつの間にか失せて、残ったのは深い憤り。それはラビに対するものでなく、自分自身に対するものだった。しかも後悔という名のスパイス付き。そこまで自分を責める理由はないのだが(少なくとも俺はそう信じている)、心はそれを否定するらしい。この怒りの発散が必要だ。
(一言文句言ってやる)
神田は自室を後にし、彼の人の部屋へと急いだ。
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hazy
ラビ様 お誕生日おめでとうございます!(10分サバよんでも1日遅れ)
うちのサイトにしてはめずらしくラブラブ路線でいってみたつもり、でした。(どこら辺が?と聞いてやりたい)(最初はそういうつもりだったんだよ!)
多分このあと神田はラビ様の部屋に行って文句言いながらなんだかんだでオメデトウって言っちゃって、喜んだラビに押し倒されるんだと思う。(そっち書いた方が明らかにラブラブじゃん…!)